約 2,183,016 件
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/160.html
“剣の聖女”と死にたがりの道化 ◆iDqvc5TpTI どれだけ遠くへ進んだところで。 どれだけ速く走ったところで。 そいつはピタッと僕の後を追ってくる。 影のように張り付いて、お化けのように付き纏う。 嫌だ、嫌だと泣き叫んでも逃げきれるはずもない。 そいつは、僕が最も恐れ嫌う化け物<ベヒモス>は。 僕自身なのだから。 「はっ……はっ……はっ……はあ、はあ、はあ」 無様だった。 仮にも帝国軍諜報部の特務軍人が感情に振り回され、後先考えずにがむしゃらに走って息を切らせている。 軍学校で習った感情の抑制法や、体力配分の仕方はどうやらすっかり忘れてしまったみたいだ。 はははっ、なんだよそれは。 せっかくの紛いなりにも鍛えた肉体が宝の持ち腐れじゃないか。 全く、何をやってるんだろ。 僕がやりたいことは、僕がやらなければならないことは、一刻も早く姉さん達を助けることなのに。 こんなところで時間も体力も浪費していいはずがないのに。 なのに。 「ちくしょう、ちくしょうッ! ちくしょおぉぉッ!! 」 脚が止まってくれなかった。 身体と心がどこまでも逃げ続けることを選択していた。 無駄なのに。 一生ついてまわるのが自分自身だ。 逃げ切るにはそれこそ―― 「わーいのー! おにーさんとかけっこなのー!」 全速力で後ろ向きに突っ走っていた思考が途切れ、一気に現実へと連れ戻される。 「誰だ!?」 声のしたほうに振り向けば一人の幼き少女の姿。 年の頃は6、7歳くらいか。 赤みのかかった二つのお下げを揺らしてにこにこしながら僕のすぐ隣を走っていた。 「何かおいしそうな匂いー。じゅる……」 日勝達からもらったタイヤキセットに視線を注ぐ幼児の緩んだ顔を見て、僕はまず自分自身に呆れた。 だってそうだろ? こんな気配を隠しもしない少女に並走されていたことにさえ気付かなかったなんてあまりにも間抜けが過ぎるじゃないか。 でも、その呆れは間もなく疑念に変わった。 少女だって? 確かに子どもは風の子元気な子と言われはする。 けれどもいくらなんでも軍属である僕の全力疾走に息一つ乱さず平然とついてくるなんてこと有り得るだろうか? 「き、君は」 動揺しながらも身体は勝手に動き剣を抜き放っていた。 いくら警戒しているからって、年端もいかない少女に剣を向けることに躊躇のない自分を哂う。 ああそうさ、慣れている。 幼子を人質に取ったことも数え切れないほどあるさ。 ただ、これまで何度も繰り返してきた時と違って、剣を突きつけられた少女からは一片の恐怖も感じられなかった。 「ひとに名前を聞くときはまず自分の名前を言うの。あたしちょこ、よろしくなの。さあ、なのったわ。今度はあなたよ!」 状況を分かっているのか、いないのか。 腰に手を当て可愛らしく言い放つ少女を見ていると、なんだか一人シリアスにやっている僕が馬鹿に思えてくる。 いや、実際馬鹿以外の何者でもない。 馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿、大馬鹿者だ。 こんな光景を誰かに見られでもしたら間違いなく僕は危険人物認定されるだろう。 周回遅れもはなはだしいが、ようやっと冷静さを取り戻してきた脳がさっきまでとは別の理由で僕を責めだす。 だからまあ。 「ちょこちゃん、それ、結局自分のほうから名乗っちゃってるわよ?」 前方からやってきた女性の第一声が危機感の感じられないどこかずれたものであったことには、心の底から安堵した。 ▽ 「うげ~……からい~」 舌を出してぺっぺと飲み込んだ海水を吐き出しているちょこちゃんの背を撫でる。 浜辺にいる理由は簡単だ。 ついさっきまで砂漠の暑さと殺風景に苦しめられた身には、地図から想起できた一面に広がる青い海が大変魅力的に感じられたからだ。 ブラッドくん達を吹き飛ばした方角から距離を取れることもありがたかった。 すぐ左隣の禁止エリアに引っかからないよう、川に沿って南下を開始。 ちょこちゃんが余りにも楽しそうに川に飛び込むものだから、わたしも海を待てずに少し川の水で身体を冷やしたりもした。 気持ちよかった。水遊びなんていったい何百年ぶりだっただろうか? 川だけじゃない。 浜辺へと辿り着くまでに横切った平野でだってわたしはうきうきしていた。 荒廃していく一方だったファルガイアで生き、死んでからも物質が存在しない世界を漂うだけだったのだ。 踏みしめた緑生い茂る大地の感触が嬉しくてちょこちゃんと一緒にスキップしてしまってもいいじゃない。 ま、まあ、年上のお姉さんとしてはあるまじき姿だったことは認めなくも無いけど。 そんなわたしの浮かれっぷりはちょこちゃんがイスラくんのことを教えてくれるまで続いた。 草原が知らせてくれたらしい。誰かがこっちに向かって必死で走ってくるって。 ……よくよく考えてみればすごい話だ。 イスラくんがほんとに居た以上、ちょこちゃんは植物とも話せるってことになる。 全くもって何でもできる子だ。 そのちょこちゃんは今度は砂でお城を作り出している。 「随分呑気だね。殺し合いの場で呑気に水遊びだなんて」 あの後イスラくんはちょこちゃんに引っ張ってこられる形でここまで連れて来られたのだ。 血塗れの手を洗い、みんなでお菓子を食べた後は手持ち無沙汰だったみたいだけど、そこは女の子に付き合わされる男の子の常だ。 我慢して欲しい。 「ふふ、十歳くらいも年下の女の子に剣を突きつけるよりはずっと健全だと思うわよ?」 「そ、それは……。やれやれ、全くもってその通りだよ」 わたし自身も数時間前にちょこちゃんを絞め殺そうとした身が何を言っているんだか。 そのことを知る由もないイスラくんが項垂れる顔を少し可愛いと思ってしまう自分は中々にふてぶてしい。 うん、悪くない気分だ。 ブラッドくんの言うとおり。 こうやって年下の男の子をからかったり、子どもと海で戯れていたりする方が、ずっと、ずっと、わたしらしい。 できることならわたしだって殺し合いよりもこうやって年下の男の子をからかったり、子どもと海で戯れていたりしていたい。 海だけじゃない。もっと、もっと、この手で触れて、足で歩いて、楽しみたい。 施設を見て回りたいと思ったのもそんなささやかで、けれど、わたしにとっては真摯な欲望からなるものだったのだ。 何も誰かを殺してしまうことを僅かな時間だけでも遅らせたいということだけではないはずだ。 「ねえイスラくん。あなた、向こうの方から来たわよね? あっちにはどんな施設があったのかしら?」 「施設? そうだね、確かに施設を見て回るのは有用かもしれないね。首輪を解除する手がかりも見つけられるかもしれない」 イスラくんはわたしの言をそう解釈した。 まあ殺し合いには乗っておらず、守りたい人が居るというイスラくんには当然か。 殺し合いに乗っている人にだってわたし以外に施設を娯楽目的で回っている人はいないだろう。 夜明け前にわたし達を襲ってきた男の人――イスラくんが返り討ちにしたビジュという者らしい――みたいな方がいっそ分かりやすい。 でも仕方ないじゃない。 海だけをとってもこんなにも楽しいのだ。 イスラくんが呑気だって言うのはもっともだけど、本物の自然に触れてはしゃぐくらい許して欲しい。 「そうだね、僕が最初に意識を取り戻したのはF-1の教会だったね。特に目ぼしい物は見当たらなかったけど……」 「いいの。中がどんな様子だったかもっと詳しく聞かせて欲しいな」 △ こちらから情報を先に渡すのもどうかと思ったけど、知り合いの情報等ならともかく、なんら実りの無かった施設の情報だ。 惜しくは無い。 気にはしていなさそうだけど、出会いがしらの印象改善もふまえアナスタシアに請われるがまま僕は語り出した。 それからしばらく彼女はニコニコしたまま僕の話を聞いていた。 やれ見所は無かったかとか、景色はどうだったかとか、まるでこの島へと観光に来たみたいだ。意味が分からない。 別に突如訪れた非日常にあてられおかしくなっているわけではないようなのが尚更不気味だ。 クロノが建てたという墓の経緯を話した時、表情が僅かに沈んだことからすると、人の死を悲しめる程度にはまともな人間のはずなんだけど。 「そんなことを知ってどうするんだい?」 遂に耐えかねて僕はアナスタシアに問いかけていた。 アナスタシアは答える、笑顔を湛えたままで。 「あら、おかしい? 生きているのよ。一分一秒でも楽しまないと」 「楽しむ? この殺し合いの舞台でかい?」 「わたしからしたら何の備えもなしに殺人犯がいるかもしれない島の道のど真ん中を走る方が気が知れないけどなあ」 「もしも君がこの悪趣味な遊戯にのっていたなら僕は今頃この世にはいなかったろうね」 「……どうしてそんなことを笑って言えるの? 冗談にも聞こえないわ」 「……」 言われてみて気付く。 僕としては軽口で言ったつもりだったけれど、例えば目の前の女性にあの時殺されていたのならオルドレイクに殺された時のように無念と感じただろうか。 冷静さを取り戻した今からすれば、あそこで死んでは結局は大好きな姉さん達に何もしてあげられないままの無為な死だと判断できる。 しかし、あの時の精神的にかなり参っていた僕からすれば? ……。 …………。 ………………。 なんだ、感情的なようで冷静だったんじゃないか。 どちらでも良かったのだ、僕にとっては。 あの時の僕は自分自身から逃げたかった。 それはつまり死にたかったということだ。 もしも殺し合いに乗っている人に会っちゃってたなら案外身勝手に喜んで死んでいたかもしれない。 だって、遅いか早いかの違いなのだから。 未だに僕は―― 「そう……。イスラくん、あなた……生きたいと思ってないのね」 生きたいと思えていないのだから。 ▽ 「わたしには理解できないわ。わたしは死にたくない。どんなことをしてでも生き延びてみせる。 イスラくん、あなたに何があったのかは知らないけれどどうして生きようと強く望まないの?」 目を見開いた後わたしの言葉に納得いったかのように頷いたイスラくんにわたしは言葉を叩きつけていた。 「気安い哀れみは侮辱と同じだよ? そういう言葉が僕にとってはたまらなく不愉快なんだ…ッ!」 「問題ないわ。わたしのこれはあなたの受け取っている通りの侮蔑よ」 鼓舞でも激励でも愛情でも憐憫でも同情でもないただの恨み言を。 生きることを諦めて<剣の聖女>という『生贄』を捧げた者達へのありったけの呪詛を。 「……っ。 君に、僕のなにがわかるっていうのさ? 毎日のように死の発作に襲われて、今度こそ死ぬかも知れないって怯え続けて……。 満足に眠ることだってできなくなってしまう。 そういう恐怖を、君は味わったことある? 手厚く看病をしてくれていた者たちが本当は、自分の死を願ってやまない。 それを知った時の絶望が、どれほどかわかるっていうの?」 分からない、分かりたくもない。 泣きそうな声で笑っている彼に物怖じすることなく返す。 偽ることの無い本音を。 「それでもわたしは生きてみせるわ。一日一分一秒、より長く。 だってわたしはもっともっとおいしいものが食べたいもの。友達とたわいの無いことをおしゃべりしたい。 おしゃれだってしたいし、恋だって成就させたいわ!」 わたしにはこんなにもやりたいことがあるんだもの。 「わかっていない!君は何も分かっていない! そんな人並みの願いを叶えようとしても代わりにより大きなものを失ってしまうだけさ! 姉さんをずっと騙し続ける羽目になった僕のように! だから僕はまた死ぬ方法を探し始めた! そして望まない形で死んだよ! 生き返ったところでなんだ? 今更生きる希望を持て、と? 僕が死んだところで誰も悲しまないでいい様に振舞う為の仮面がいつの間にか本物に成り代わってしまっていた僕に? 殺し合いに乗っていないと言いながら既に一人無残に殺してしまったような人でなしに? あはは、あはは、あはははは! ひどいじゃないか! 耐えられるわけないだろ! なら姉さんやアティみたいな優しい人たちを助けることでせめてもの償いができたんだと自己満足できたところで死なせてくれよ!!」 虚無と羨望を浮かべた目で睨みつけてくるイスラくんと目を合わせる。 彼の瞳はわたしを映しているようでいてその実自分だけしか映していなかった。 自分しか映っていないのに自分からも目を逸らしていた。 「分かっていないのはあなたよ。 そうやってあなた自身は生きることを諦めてさぞかし楽でしょうね。 でも、あなたに生きていて欲しいって思う人達もいるでしょ? ねえ、その姉さんやアティっていう人はあなたの為に身を削っていない? 生きる気がないあなたに希望を持ってもらおうと必死になっていなかった? わたしはそうだった。 誰もが生きる希望を失った世界でも、わたしの大好きな人たちには生きていて欲しいって必死に足掻いたわ。 わたし一人生き残っても意味が無かったもの」 後先考えない極論で言えば生き残る為だけなら焔の厄災に我が身を省みず立ち向かう必要はなかった。 アシュレーくんが宇宙に放り出されても無事だったようにアガートラームの加護さえあれば最悪ロードブレイザーにファルガイアが砕かれても大丈夫だったのだ。 それでもわたしが戦ったのはファルガイアが大好きだったから。 あそこには大好きな人たちがいたから。 守りたかったのだ、わたしの命も含めたわたしの世界を。 イスラくん。あなたの命はあなたのものだけじゃないの。 あなたの大切な人たちの世界の一部でもあるのよ? 「なんだよ!? 僕が言っている通りじゃないか! 僕が死ねば姉さん達も頑張る必要がない! 悲しみだって時間はかかるけど退いてくれるはずだ! それに何度も言っているじゃないか! 僕は頑張ったんだ! 姉さん達が悲しまないよう必死で頑張った!」 頑張って嫌われて、頑張って大好きな人たちを傷つけて。 それが何になるの? よしんばあなたの言う通りでも不幸にならないだけじゃないの? 幸福には程遠いじゃない。 「……わたしはあなたが妬ましいわ。 誰かに心の底から想ってもらえるあなたが。 わたしはあなたが憎らしいわ。 ひとりぼっちじゃないのに勝手に自ら壁を作って引きこもって。 ねえ、必死で頑張ったってあなたは言ったわよね? 必死って何? 来るべき辛いことを我慢できずに諦めること? ええ、ええ、そっちの意味ならお似合いでしょうね。 違うでしょ!? 必死っていうのは足掻いてでも生きようとすることでしょ! あなたは生きようとしたの? 死にたい、死にたいって言っているけれどあなた生きようって努力はしなかったの!? しなかったんでしょうね。そうやって安易な道に逃げた。戦わないで絶望して、あなた自身がしなくちゃならなかった戦いを押し付けた!」 誰も彼もが頼ってきてばかりで、聖女だなんて祭り上げて、その実アナスタシア・ルン・ヴァレリアという一人の少女を見てくれていた人は何人いただろうか? ロードブレイザーとどんな形でもいいから共に戦ってくれた命はどれだけあっただろうか。 命は重い。たとえ不死の少女だろうと自分一人の分を背負うだけで精一杯だ。 わたしが死んで以来長いときを一人で過ごした少女のことを思い出し、語気が更に荒くなる。 生きることを放棄したからといって、その人の命がある、あったという事実まで消えるわけじゃない。 帳尻は何らかの形で合わされることになる。 あなたのしていることはあなたの命の埋め合わせを誰かの命の幾分かをもってさせているということなのよ? そんなわたしの訴えをなぎ払うようにイスラくんは止めの言葉を言い放った。 「うるさい、うるさい、うるさい、黙れ! 誰もそんなこと頼んでなんかいない! 他人なんてそもそも信じちゃいなかった! 人は言葉でいくらでも本心を偽れるんだもの。 だから、僕は僕の決めたことだけしか信じない。 結果以外のものに価値があるなんて絶対認めない! 安易な道って言ったよね? だったらその方がずっと、ずっと、手早くていいじゃないか! 僕が死ねばみんな幸せになれる! だったら死んで何が悪い!」 理解した。目の前の彼が決して理解できない存在であることを。 腹が立つ。自己の全てを否定されているみたいでむしゃくしゃする。 自分が死ねば皆が幸せになる? ふざけるな。 世界を救う為にわたしは死んだわ。 それでハッピーエンド? めでたしめでたし? 納得できるわけが無い。 だって肝心のわたしが救われていないじゃない。 あなたはどうなのイスラくん。 あなたは―― 「あなたは救われたの?」 「……救われるさ。君みたいに生き残るために足掻いて周りの人を苦しめて――殺してしまって本当に一人ぼっちになるよりはね」 何をしてでも生き残るというのなら、一番難易度が低い方法はこの殺し合いで優勝すること。 首輪に加えて僕達を有無を言わさず時間と世界すらまたいで拉致することができる魔王相手に挑むよりも何倍も勝率はある。 あれだけわたしに本音をぶつけられたイスラくんがこちらの考えを読めていないはずが無い。 いやみったっぷりに――それでいて本物の怒りも湛えてイスラくんは直前までの激昂ぶりが嘘のように静かに言い切った。 イスラくんもまたわたしと同じ答えに辿り着いたのだ。 わたしと彼とが対極の存在なんだって。 ううん、一直線上にすらないのだからこれはもう平行線ね。 交わらないというのならいくら言説しあっても無駄。 わたしの方も一気に熱が冷めていく。 その間にもイスラくんはわたし達の方に注意を払ったまま距離をとりにかかる。 わたしは、動かない。 ちょこちゃんに頼もうともしない。 「僕を殺さないでもいいのかい?」 ブラッドくん達に続いてわたしが殺し合いに乗っていると知ってしまった人が増えたわけだ。 合理的に考えたら所謂始末をしておいたほうがいいのだけれど。 「必要ないわ。あなたみたいな人は放っておいても死んでくれるから」 わざわざ願いを叶えてなんてあげるものか。 繰り返し言うけれど平行線なのだ。 交わらないのなら殺し合いすら起きはしない。 「そうかい。ちょうど良かった。僕も死に方くらいは選びたいからね」 それは転じてイスラくんが危険人物であるわたしをビジュくんの時とは違い生かした理由だ。 うすうすちょこちゃんのことに気付いているのだろう。 今も彼の警戒はわたしよりもちょこちゃんへと向いているもの。 それともイスラくんは自分のようにわたしが罪悪感に耐え切れず押しつぶされる姿でも見たいのかな。 だったらその願いも叶いはしない。 今度こそわたしは何をしてでも、何があっても絶対に生き抜く。 「さようなら、死にたがりなイスラ君」 「ばいばい、生き急ぐお姉さん」 最後にわたし達は互いにありったけの毒を込めた一言を吐いて別れた。 ちょこちゃんには適当なことを言って誤魔化すことにしよう。 そう考えてふと思う。 わたし達は偽者の笑顔の浮かべ方だけは似ていたかもしれないと。 【I-5 浜辺 一日目 午前】 【アナスタシア・ルン・ヴァレリア@WILD ARMS 2nd IGNITION】 [状態]:健康 [装備]:絶望の鎌@クロノ・トリガー [道具]:不明支給品0~2個(負けない、生き残るのに適したもの)、基本支給品一式 [思考] 基本:生きたい。そのうち殺し合いに乗るつもり。ちょこを『力』として利用する。 1:イスラくんから聞いた場所の実物を見にいこうかな、それとも未知のところを優先しようか。 2:施設を見て回る。 3:『勇者』ユーリルに再度出会ったら、もう一度「『勇者』とは何か」を尋ねる。 [備考] ※参戦時期はED後です。 ※名簿を未確認なまま解読不能までに燃やしました。 ※ちょこの支給品と自分の支給品から、『負けない、生き残るのに適したもの』を選別しました。 例えば、防具、回復アイテム、逃走手段などです。 ※アシュレーやマリアベルも参加してるのではないかと疑っています。 【ちょこ@アークザラッドⅡ】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:不明支給品1~3個(生き残るのに適したもの以外)、基本支給品一式 [思考] 基本:おねーさんといっしょなの! おねーさんを守るの! 1:おにーさんからもらったお菓子おいしかったの。また会いたいなー 2:『しんこんりょこー』の途中なのー! 色々なところに行きたいの! [備考] ※参戦時期は不明。 ※殺し合いのルールを理解していません。名簿は見ないままアナスタシアに燃やされました。 ※アナスタシアに道具を入れ替えられました。生き残るのに適したもの以外です。 ただ、あくまでも、『一般に役立つもの』を取られたわけでは無いので、一概にハズレばかり掴まされたとは限りません。 ※放送でリーザの名前を聞きましたが、何の事だか分かっていません。覚えているかどうかも不明。 ※ちょこの竜巻でH-5とH-6の平野の一部が荒地になりました。 【I-5 一日目 午前】 【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3 】 [状態]:健康、疲労(小) [装備]:魔界の剣@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち [道具]:不明支給品0~1個(本人確認済み)、基本支給品一式(名簿確認済み) 、ドーリーショット@アークザラッドⅡ 鯛焼きセット(鯛焼き*2、ミサワ焼き*2、ど根性焼き*1)@LIVEALIVE、ビジュの首輪、 [思考] 基本:首輪解除と脱出を行い、魔王オディオを倒してアズリア達を解放した後安らかに死ぬ 1:これでいいんだ、これで 2:途中危険分子(マーダー等)を見かけたら排除する。 3:エドガーとルッカには会った方がいいかな? 4:極力誰とも会わず(特にアズリア達)姿を見られないように襲われたり苦しんでいる人を助けたい。 5:今は姉さんには会えない………今は。 [備考]: ※高原、クロノ、マッシュ、ユーリルの仲間と要注意人物を把握済み。 ※参戦時期は16話死亡直後。そのため、病魔の呪いから解かれています。 ◇ やっほー、ちょこなの~! 今日はねー、ちょこ、おにーさんとかけっこしたの~。 そしたらね、おにーさん、ちょことおねーさんにばななのお菓子をくれたんだ! 美味しかったのー。 そのあとね、おねーさんとおにーさんが二人ではなしてたの。 とってもとってもむずかしそうなことでなにをはなしていたのかわからぬー! でも、ちょこいー子だから、もっともっと別のことならわかったの。 それはね、おねーさんもおにーさんも大好きなみんなを守りたがっているやさしい人だってことなの! ○月△日その1 ちょこの日記より 時系列順で読む BACK△075 Trust or DistrustNext▼084 心の行く先 投下順で読む BACK△075 Trust or DistrustNext▼077-1 機械仕掛けの城での舞踏 068 ヘクトル、『空』を飛ぶ アナスタシア 085 ノーブルディザイア ちょこ 065 アズリア、『熱』に触れる イスラ 086 使い道のない自由 ▲
https://w.atwiki.jp/yamamura2/pages/8960.html
【TOP】【←prev】【Nintendo DS】【next→】 RPGツクール DS+ タイトル RPGツクール DS+ Create The New World 機種 ニンテンドーDS 型番 TWL-P-VEBJ ジャンル ツール 発売元 角川ゲームス 発売日 2011-12-15 価格 5040円(税込) RPGツクール 関連 Console Game SFC RPGツクール SUPER DANTE RPGツクール 2 PS RPGツクール 3 シミュレーションRPGツクール RPGツクール 4 SS シミュレーションRPGツクール PS2 RPGツクール 5 RPGツクール Handheld Game GB RPGツクールGB うちゅう人田中太郎でRPGツクール GB2 GBA RPGツクール アドバンス NDS RPGツクール DS RPGツクール DS+ 3DS RPGツクール フェス 駿河屋で購入 ニンテンドーDS
https://w.atwiki.jp/kenmou/pages/44.html
[部分編集] ゲーム名 詳細関係 メモ Epic Quest 1/2/3 モンスターバトルRPG The Enchanted Cave 1/2/3 ダンジョン潜る Epic Battle Fantasy 3 1 / 2 /3 ナタリーちゃんの乳が揺れる wiki < カットインswf > 太くて長いオレの○○○2 1/2/3 剣が無限にでかくなる Arcuz 1/2/3 グラフィックが綺麗なアクションRPG wiki クムドールの塔-絶望の魔女- 1/2/3 WIZ系の3DランダムダンジョンRPG
https://w.atwiki.jp/toubousya/pages/155.html
メックウォリアーRPGのキャラクター
https://w.atwiki.jp/deforpg/pages/26.html
作品名 姫RPG ~モンスターハウス編~ ぞんびたまご 作者のコメント 姫がなんやかんやで冒険するゲームSS撮ったけどこうなるかどうかは未定タイトルに深い意味はない 管理のコメント いいですね、語尾にロマンを感じます。 ポテチアーマーが某デストロイドに見える -- 名無しさん (2007-10-19 00 02 30) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/gamemusicbest100/pages/7463.html
電波人間のRPG2 機種:3DS 作曲者:ベイシスケイプ(崎元仁、工藤吉三、千葉梓、金田充弘、岩田匡治) 発売元:ジニアス・ソノリティ 発売年:2012 概要 『電波人間のRPG』の続編。前作から大幅にボリュームアップし収録曲も増加した。 サントラは発売されていないが、『電波人間のRPG FREE!』のサントラにこのゲームの一部の曲が収録されている。 ただし人気曲であるラスボス戦の曲は残念ながら未収録。 収録曲(仮曲名) ボールドで表記された曲は『電波人間のRPG FREE!』のサントラに収録されている曲。 曲名 作・編曲者 補足 順位 Title タイトル Antenna アンテナ Digitown デンパタウン Battle 工藤吉三 通常バトル『FREE!』での曲名は「バトル2」 World Map 千葉梓 ワールドマップ『FREE!』での曲名は「ワールドマップ2」 Denpa Men's House 電波人間ハウス Farm 小さな農家 Cave 岩田匡治 洞窟『FREE!』での曲名は「洞窟2」 Boss Battle ボス戦 PC パソコン Village 千葉梓 山奥の村『FREE!』での曲名は「山奥の村」 Dwarf Home 隠れの家『FREE!』での曲名は「隠れの家」 Mystic 工藤吉三 謎のほこら『FREE!』での曲名は「謎のほこら」 Cave of Darkness 金田充弘 暗闇の洞窟『FREE!』での曲名は「暗闇の洞窟2」 Museum ミュージアム Elegy 港町(復興前) Tower of Evil 塔 At Sea 海 Volcano しゃくねつ火山 Desert 砂漠 Pyramid 工藤吉三 ピラミッド『FREE!』での曲名は「謎の遺跡」 Coliseum コロシアム Coliseum Battle コロシアムバトル Dark Ocean 暗い海 Water Temple 水の神殿 Shop ショップ Fairy 岩田匡治 妖精の里・精霊のほこら『FREE!』での曲名は「妖精の里」 Ice Island 氷の島 Evil Cave 邪悪の洞窟 Palace 岩田匡治 パレスタワー『FREE!』での曲名は「悪のパレス」 Final Boss Battle ラスボス&魔神戦 ダウンロード103位 Ending エピローグ Credits スタッフロール サウンドトラック 電波人間のRPG FREE! オリジナル・サウンドトラック 1部の曲が収録
https://w.atwiki.jp/osusumexbox/pages/27.html
Dragon Age II 公式サイト http //www.spike.co.jp/da2/ 発売元 スパイク 発売日 2012/02/02 ジャンル RPG レーティング CERO D 17歳以上 Dragon Age Origins 公式サイト http //www.spike.co.jp/dao/ 発売元 スパイク 発売日 2011/01/27 ジャンル RPG レーティング CERO D 17歳以上 Mass Effect(マスエフェクト) 公式サイト http //www.masseffect.jp/ 発売元 日本マイクロソフト 発売日 2009/05/21 ジャンル RPG レーティング CERO D 17歳以上 セイクリッド 2 【レビュー】 好きな人はかなりやり込めるゲーム! 武器、防具、スキル、クラスなどかなり豊富で楽しい プレイヤーの視点がかなり高いので少し違和感があるが慣れると問題は無いだろう クエストは多いがおつかいばかりなので少し面倒 公式サイト スパイク 発売元 2010/02/10 発売日 2009/05/21 ジャンル RPG レーティング CERO C 15歳以上 ドラゴンズドグマ 公式サイト http //www.capcom.co.jp/DD/index.html 発売元 カプコン 発売日 2012/05/24 ジャンル アクション RPG レーティング CERO D 17歳以上 ドラゴンズドグマ ダークアリズン 公式サイト http //www.capcom.co.jp/DD-DA/ 発売元 カプコン 発売日 2013/04/25 ジャンル アクション RPG レーティング CERO D 17歳以上
https://w.atwiki.jp/unkochangame/pages/31.html
ゲームタイトル 機種 ロマンシング サ・ガ3 SFC ポケットモンスター ルビー・サファイア GBA ポケットモンスター エメラルド GBA ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン GBA ポケットモンスター 青 GB 脱糞のエポケー フリゲ
https://w.atwiki.jp/rpgrowa/pages/195.html
使い道のない自由 ◆SERENA/7ps 「ヘクトル、異常はないか?」 「ああ、こっちも異常なし」 ブラッドの声に、ヘクトルが退屈混じりの声で返事を返す。 ついでに、欠伸も混じった。 ヘクトルは欠伸を噛み殺しながら、森の中に混じり偵察を続けた。 ホルンの魔女に回復させられた時、疲労も消え去ったはずだが、退屈に殺されてしまいそうな気分になる。 眠たくもないのに眠気が襲ってくる。 ここは島の中央から南へと流れる川にかかった二つの橋のうち、南に位置する方。 アナスタシアとちょこによって、ひと時の空中遊泳を楽しむことになったブラッドとヘクトルは着地後、近くで見つけた橋の近くに陣取り、偵察をすることにした。 橋を渡っている人間からは見えず、されどこちら側からは橋を渡ろうとする人間はばっちり見える。 そういうポジションに腹ばいになって、深く静かに潜行するように、森の景色と一体化して未だ見ぬ人物との出会いを待つ。 「しっかしよ、誰も来ねぇな。 本当に誰か来るのか?」 「来る。 この近辺に人がいるならほぼ確実にな」 ヘクトルの疑問に、ブラッドは視線は橋から離さず、そして確信に満ちた声で答える。 ゴツゴツとした岩を組み合わせたような肉体が違和感なく森の中に溶け込んでいる。 不平や不満を言わず、ただ黙々と、ただ一点を見つめて。 おそらく、相当場馴れしている。 ブラッドが偵察や監視という任務を数多くこなしていることをヘクトルは悟った。 泥まみれの戦場というものがブラッドという男には非常に馴染む。 ヘクトルもこういったことは初めてではないが、行動のあちこちにぎこちなさが残ってしまう。 「考えてもみろ。 9 00からはF-4とH-5が侵入禁止エリアになる。 西からこちらへ来ている人間は間違いなくこの橋を通る」 ブラッドに言われて、F-4とかH-5ってどこだっけ、とヘクトルが地図を取り出す。 程なくして、手に取った地図から言われた地点を見つけ出した。 ヘクトルがそれを見つけたのを確認して、ブラッドがさらに言葉を続ける。 「G-4、G-5のような砂漠を好き好んで通り抜ける人間はいない。 だとすると、残った道はここ。 つまり、今俺たちがいるI-6の橋だけだ」 「すげぇな、地図が完璧に頭の中に入ってるのか?」 「基本だ。 地図を見れば地形が分かる。 地形を見ればどのような行動をとるべきか自ずと分かる。 敵が待ち伏せをすることのできる場所、逆にこちらが待ち伏せするべき場所。 その他諸々も含めてな。 地図が不正確である可能性もある以上、過信はできないが一定の指標にはなる」 粗野な外見を持っているが、ブラッドはとても思慮深い。 もちろん、見た目どおりの戦闘力と、内に秘めた熱い心も有しているが。 外見通りの豪放磊落な性格であるヘクトルとは、その意味においては対照的だ。 「あー、そうだよな。 地図覚えるってのはやっておかないとマズイよな」 バツが悪そうに、ヘクトルが呟く。 もう、兄がいた頃のように好き勝手をやる訳にはいかない。 オスティア候としての立場を受け継いだ以上、武術ばかりを鍛えるということもできないのだ。 退屈な算術の時間に居眠りをするのも、学問所を抜け出して闘技場で戦闘の訓練だけをするのも駄目だ。 候弟という立場にありながら、そこまで奔放に生きてこれたのも、全ては亡くなった兄ウーゼルのおかげ。 正直、オスティア候なんて立場に興味も執着もないし、性に合わないとヘクトルは思う。 だが、名君と謳われた兄をヘクトルは尊敬しているし、家族としても好きだった。 兄に少しでも追いつけるよう、苦手なこともやっていかないといけない。 戦術論の基礎として、戦場の地形を頭に入れることもやらなければならないのだ。 「橋を渡らずに、直接渡河をする可能性は低い」 ヘクトルの呟きを敢えて流して、ブラッドがさらに続ける。 それはブラッドに対して向けられたものではないと感じたからだ。 「ヘクトル、お前も一軍を指揮する立場にあるなら分かるはずだ。 渡河こそが行軍中におけるもっとも危険な時間の一つだと」 人間は水という脅威に対してとても無力だ。 水かきもヒレもない、ましてやエラ呼吸もできない人間は河を渡る際、水の抵抗を大幅に受ける。 そんな中、弓矢や魔法の嵐を受けると、人間はどうしようもない。 「おっ、それなら分かるぜ。 なにしろ俺たちオスティアが誇るアーマーナイトの天敵だからな」 難攻不落と言われたオスティア城を守るのは、固い鎧に身を包んだアーマーナイトやジェネラルの群れ。 そう、鎧というのはとても固く、そして重い。 アーマーナイトにとって、天敵といえるものの一つが河なのだ。 重い鎧に身を包めば、いかな水練の達人とはいえ、泳ぐのは難しい。 鎧だけに限らず、水を吸い込んだ衣服というのは意外に重いのだ。 ヘクトルが今着込んでいる鎧も、重騎士並みの厚さと重さだ。 これを着たまま渡河をするのは、無茶が売りのヘクトルでもさすがに躊躇われる。 「重武装をした兵士が通るのが難しいだけではない。 通常、渡河というのは最大級の警戒の下行われる」 まずは本隊が河の付近で待機。 偵察隊が周りを探索して、待ち伏せした敵部隊が確認。 先発隊が渡河を行い、無事対岸に着ければ、今度は先発隊がそのまま対岸付近を偵察。 そうして、ようやく本体が河を通ることができるのだ。 「多少でも身に覚えのあるものなら、直接の渡河というのはまずやらない」 「そんなもんか」 橋ならば、待ち伏せまたは襲撃されても、少なくとも走って逃げることはできる。 なす術もなく死ぬか、精一杯抗った後に死ぬかを選ぶとしたら、大抵の人間は後者を選ぶだろう。 「しかし、こうも代わり映えの風景ばかり見てると飽きるよな」 待つのに飽きた末に、気絶していたブラッドを担いで運ぼうとしていたヘクトルだ。 こういった、地味な作業はとても苦手である。 一方、こうすることを提案したブラッドはさすがに文句一つ言わない。 勝利をもぎ取るのは、気の遠くなるような地道な積み重ねの結果だと知っているが為だ。 そして、時間は過ぎる。 すでに、お日様はかなり上の方に昇っていた。 ブラッドにとっては取るに足らない時間。 しかし、ヘクトルにとっては永遠にも思われる時間。 それでもヘクトルが我慢できたのは、新オスティア候としての自覚が芽生え始めているからかもしれない。 「来たぞ」 「マジだ。 本当に来たな」 見つけたのはブラッドだが、喜んでいるのはヘクトルだ。 ようやく誰かに会えたことと、この退屈さから開放されることが交じり合った喜び。 「男一人か。 よし、俺が行ってくるぜ」 「ヘクトル、油断はするなよ」 「分かってるよ」 起き上がり、砂埃を落としてからヘクトルは見つけた男の方へ走っていった。 ブラッドは現在位置のままで待機。 何かあればすぐにヘクトルに加勢できるように。 また、来ている男に不審な行動を感じればすぐに対応できるように。 男が、志を同じくする同士であることを願いつつ、ブラッドはヘクトルの背中を見送った。 ◆ ◆ ◆ 橋を渡っていた男、イスラ・レヴィノスはイライラしていた。 先ほど出会ったアナスタシアとの会話を思い出すだけで、怒りにも似た感情が湧き起こる。 彼女の言っていたことには確かに正論もあった。 だが、正論が人を救うとは限らない。 イスラ自身がどんな苦痛を味わい、惨めな思いをしてきたかを、聞いただけでしか知らない女にとやかく言われるのは不快でならなかった。 だから、彼は橋を渡るとき、軍で習った基本を忘れていた。 頭の中で、彼女に対する反論をずっと続けていた。 彼は警戒もせずに、ノコノコと橋を渡っていた。 「おーーーーい!」 もし、そこで待ち構えていたのが一人だけで勝ち残ることを選んだ者なら、イスラは殺されていたかもしれない。 しかし、運のいいことに橋の付近で待ち伏せていたのは青い髪に精悍な顔つき、そして中々に重たそうな鎧を身に着けた男――ヘクトルだった。 無警戒に走り寄ってくるヘクトルを見て、イスラは我に返り、すぐさま男の値踏みをする。 今まで会った中で言うと、マッシュや高原と似たようなタイプに見えた。 要するに、腹の探り合いなどは苦手そうだと。 「いやぁー、ずっとここで誰か来るかと思って待ってたんだけどよ。 退屈で死にそうだったぜ」 イスラが特に警戒してる風に見えなかったため、ヘクトルは親しげに声をかけながら近寄る。 しかし、イスラは剣に手をかけ、柔和な笑みで静止の声をかけた。 「そこで止まってくれるかな? 僕としても、友好的な態度を装って近寄ってきた男に後ろから斬られたくはないからね」 「お、おおう。 ま、そりゃそうだな」 イスラとヘクトル、二人はギリギリの間合いで対峙する。 両者共に殺しあう気はないのだが、その言葉一つだけでは信用できないほどに、この世界は世知辛い。 「僕はイスラ。 イスラ・レヴィノス。 イスラでいいよ」 「ヘクトルだ」 とりあえず自己紹介だけは問題ないと思い、してみたもののそれで二人の距離が縮まるわけではない。 そのまましばし、お互いの距離を測りかねた二人は立ち尽くすが、イスラから歩み寄ることにした。 「とりあえず、このままじゃ埒が明かないから、お互いに質問を一つずつしていくってのはどうかな?」 「お、いいなそれ。 じゃあ俺からいいか?」 「どうぞ」 「まず、お前が最初にいたのはこの島のどこだ?」 「西のほうにある教会だよ。 特に変わったところはないごく普通の教会」 「なるほどな」 まず、ヘクトルは当たり障りのない質問からはじめる。 これに対して、さほど重要性を感じないイスラは正直に答える。 「それじゃあ今度はこっちだね。 僕のことを捜してる人に出会わなかったかい?」 「誰かいるのか?」 「今は僕の質問の番だよ?」 「あ、わりぃな。 いなかったぜ」 イスラの質問は空振りに終わる。 アズリアと出会えば必ずやイスラを捜していると言うだろうから。 「おし、また俺だな。 お前、今まで誰かに会ったか?」 「会ったのは会ったね」 「本当か? 誰だ?」 「……高原日勝とマッシュ、そしてクロノっていう人たちかな。 全員男だよ」 問いに対するイスラの答えには若干間があった。 だが、ヘクトルはそれに気づかず、マッシュという男の名前に反応した。 「マッシュか! セッツァーが言ってた奴だな。 あの金髪で何とかっていう格闘技を使う」 「へえ、君はマッシュの知り合いにあったみたいだね。 セッツァーの名前なら僕もマッシュから聞いたよ」 「何だ何だ、セッツァーの知り合いのこと知ってるなら問題ないじゃねえか」 今度こそヘクトルはイスラに近寄り、体育会系のノリでイスラの肩をバンバンと叩く イスラは、柔和な笑みを崩さないまま、ヘクトルの無用心さに多少呆れた。 自分の知り合いならともかく、知り合いの知り合いも信じられるというのはどういうことかと。 「そうなるね。 じゃあ僕らのやっていたのは意味なかったのかもしれないね」 「考えるとすっげえ間抜けなやり取りだったなおい」 しかし、ヘクトルは知らない。 怪我人の回復までしてくれたセッツァーの瞳の奥に隠された真実を。 一手先ならともかく、二手も三手も先を見据えたセッツァーの戦略に気づけない。 もし、ここでさらにエドガーやティナの人物像について語り合えば、二人は相互の情報の認識に齟齬があることに気づいたかもしれない。 もし、イスラが出会ったのがマッシュではなくエドガーであったら、こうはならなかったかもしれない。 全ては運。 ヘクトルとイスラがそれ以上語り合うことをしなかったのも、イスラが出会ったのがマッシュであったのも。 ギャンブルに生きる男、セッツァーが引き当てたカードは果たしてスペードのエースなのかジョーカーなのかあるいはそれ以外の何かなのか、今はまだ分からない。 「おーいブラッドー! 問題ないぜー!」 ヘクトルは無防備な背中をイスラに見せて、ブラッドを呼ぶ。 イスラはそのヘクトルの大きな背中を見て、ヘクトルをある程度信用することにした。 同時に、ヘクトルに対する認識を改める。 高原やマッシュとは似ているようで少し違うと。 「無闇に他人に背中を見せると危ないよ?」 「そん時はそん時だよ」 暗に自分が襲うかもしれないぞと言ってみたが、ヘクトルは気にしてないようだった。 こうして無防備な背中を晒している理由が、何となく他の人間とは違う気がするとイスラは思った。 仮に高原やマッシュが背中を晒しても、それは不意打ちされても対応できる自信と自負があったからだろうが、ヘクトルはそれとは少し違うような気がした。 確かにヘクトルにも実力はあるだろうが、だからといって己の実力をひけらかすように背中を見せているのとはまた違う。 殺されるようなら、所詮自分の人生はその程度のものだったのだという開き直りとも違う。 イスラはヘクトルの背中を見て、無防備だと思うより先に大きな背中だと思ったほどだ。 アティを見たときと同じような感覚。 あれは、あの背中は、導くものの背中だ。 仲間を率いて、率先して前に立ち、皆の期待に応える者の背中だ。 その背中を見ると、どんなに屈強な大男も小さな子供でさえもついていきたくなるような。 そうして、いつしか彼は大勢の人間の輪の中心にいて、笑っているのかもしれない。 だけど、そう感じてしまったのは一瞬だけのことだ。 それはまだ小さな、夜空に瞬く星のように儚い光。 けれど、何時かは強き光となって闇夜を照らすのかもしれない。 王道とは違う、未踏の道を歩むものの背中。 後に、兄ウーゼルに勝るとも劣らない名君と呼ばれる才能の片鱗をイスラは感じたのかもしれない。 そうして、自分自身がそういった人間には一生なれないことも意識した。 もちろん、当のヘクトルはそんなことを意識してないが。 「ブラッド・エヴァンスだ」 「イスラ・レヴィノス」 ヘクトルよりも大柄なブラッドが現れて、イスラは邪気のない笑顔を維持したままブラッドの値踏みをする。 大柄な体躯、そして筋肉質な肉体の持ち主という点ではヘクトルと似ているが、ヘクトルよりも思慮深い性格に見えた。 「ブラッド、収穫だぜ。 こいつセッツァーが言ってたマッシュに会ったってよ」 「ほう」 目を細めるようにして、ブラッドがイスラを見る。 視線を受け止めながら、イスラが答えた。 「僕はやりたいことがあるから、一人にさせてもらってるんだけどね。 ユーリルっていう仲間もいるみたいだよ」 探るような視線だと、イスラはブラッドの視線を評する。 もっとも、ブラッド自身もそのつもりだったが。 与えられた情報を元に論理を組み立てるのは得意だが、ポーカーフェイスのやり取りはブラッドもそこまで得意ではない。 現状のイスラにそこまで不審な点を見つけることはできないので、ブラッドは本題に入ることにした。 「では、本題に入るか。 知っている限りの情報を教えてもらいたい。 もちろん、こちらも知っている情報は全て教える」 「ヘクトルに言ったのでほとんどだけどね。 教会で目覚めて、マッシュたちに会って、君たちにあった。 それくらいだよ」 イスラはアナスタシアのことは言わない。 協力関係にある人間でもないし、思い出すのは不快だったからだ。 まさかブラッドたちがアナスタシアの情報を欲しているとは知らないイスラは、しばらく経った後にようやくアナスタシアとヘクトルがイスラよりも前に接触していたことを知った。 が、しかし、今更正直に言っても仕方ないので黙っていることにした。 「アシュレー・ウインチェスター、カノン、マリアベル・アーミティッジは大丈夫だ。 俺が保証する。 トカについては保留だ。 あれは思考が全く読めない」 「こっちはリン、フロリーナ、ニノが安心だな。 危険かもしれないのがジャファルって暗殺者だ。 こいつと戦うときは要注意だぜ。 ちょっと瞬きしている間に自分の首を切り裂かれてもおかしくないくらいの凄腕だ」 「アティ、アズリアくらいだね、僕は。 アズリアっていうのは名前を見れば分かると思うけど僕の姉さんだよ。 知っている人間で特に危険な人物はもういないかな」 「リーザって名前に心当たりはあるか?」 「悪いけど、ないなあ……」 「そっか。 ならいいんだ……」 さらに、三人がそれぞれ捜して人間、そして危険だと思われる人間の情報を交換する。 ここでも、セッツァーの言っていた情報とマッシュの言っていた情報の違いが明らかにされることはなかった。 共通の知識として、確認するまでもないと三人が考えたため、そして優先すべきはARMSのメンバー、リンやフロリーナ、アズリアの名前を交換することだったからだ。 「さて、と。 こんなもんだな」 場所を橋の真ん中から再び人目につかない場所に変えて、お互いの情報の交換もあらかた終わった。 ヘクトルが凝った肩を揉み解しながら、立ち上がる。 「で、俺たちとは一緒に行けないんだな」 「うん、セッツァーがやりたいことがあったみたいに、僕にもやることがあるから」 念のために確認するようなヘクトルの問いに、明確な意志でイスラが答えた。 セッツァーの時もそうだったし、ヘクトルは無理に引き止めることはしない。 こうして、オディオに対する反抗の意志を確認できただけでも収穫はあるからだ。 クロノたちと一緒に行かないことを選んだときのように、今回もイスラは単独行動を選ぶ。 「姉には、会う気はないのか?」 「……もちろん、会いたいよ。 でも、今はまだ会えない」 「何か、会えない理由でもあるのか?」 「うん、まぁね。 ちょっとした姉弟喧嘩中みたいなもので、会うのが気恥ずかしいんだよ」 「なら、いいけどよ」 そこで、ヘクトルの眼差しに寂しさと厳しさが混じったような感情が含まれる。 「喧嘩できるのも、お互いが元気なうちだけだぜ。 ある日突然、心臓だか脳だかにウッときてそのままポックリ逝くことだってあるんだ。 ましてこんな状況ならなおさらだ。 今は会えないってんなら無理は言わないけど、いつか必ず会って仲直りしろよ」 兄、ウーゼルを襲う病魔の進行がもはや取り返しのつかないところまで進行してきた頃に、ようやく気づいたヘクトルの言葉は重い。 深い目をしたヘクトルの言葉はイスラの胸にもすうっと入り、染み込んだ。 そして、その言葉の意味を考え、刻み付ける。 「ああ、そうだね……」 表面上は肯定の意を示しつつ。 だが、それでもイスラはアズリアに会わないと決めた。 ヘクトルの言葉の意味を知り、ヘクトルが今言ったようなことを経験したのだろうとも想像はついた上でも。 死にたいというのは固い意志のもと、ずっと昔から思っていたことだ。 今更アズリアには会えない。 会って交わす言葉など、もうありはしないのだ。 イスラができるのは、二度目の生をアズリアのために使い、もう一度死ぬことだけなのだ。 「少し、いいか?」 と、そこで沈黙を保っていたブラッドが口を開く。 「何かな?」 「もし、アズリアという姉やアティが死んだら、お前はどうするつもりだ?」 「それは、もちろん――」 答えを言おうとしたイスラの口が、二の句を継げずに止まる。 ヘクトルとブラッドが何事かと問おうとした時、遅れて二人も状況を認識する。 風と、振動と、強い光。 まずは、東の空に明滅する光が見えた。 真昼でもなお認識できるほどの光量は、破壊の相を色濃く帯びている。 続いて、風。 東側の木々だけがざわめくのを感じた。 もしも鳥が木に留まっていたら、上空に逃げ出しただろう。 そして、振動。 「――!?」 「今……揺れたか?」 口にしたのはヘクトル。 静止してなければ感じ取れないであろう程の微弱な振動だったが、三人とも確かに地面が揺れるのを感じた。 ブラッドとヘクトルは顔を見合わせると、すぐさま震源地へと向かって走り出した。 「悪い、イスラッ!」 ブラッドがイスラに声をかける。 あれだけの大規模な爆発か何かを起こせる実力を持った者など、ちょこあたりしか今のところ心当たりはない。 アナスタシアがいればいいという期待と、アナスタシアがついに殺人に手を染めたりしないかという不安を抱きながら、ブラッドは走る。 しかし、ヘクトルの他に、イスラも追走していた。 「僕も行くよ。 進んで殺し合いをするような奴がいるなら戦わないといけないからね」 今回ばかりは、イスラもあの光に危機感を感じて同行することにした。 もしも、あの光がアズリアに向けられたら……。 そう思うと、倒さなければならないという気持ちがどこからか湧いてきて、自然にブラッドとヘクトルの後ろを追っていた。 それは一見、正義感に燃える行動に見える。 でも、本当にそうなのか? 「ありがてえ。 恩に着るぜ」 イスラの行動に純粋に感謝をしつつ、ヘクトルはブラッドに負けないペースで走る。 だが、イスラは走っている最中、あることを考えていた。 アズリアが死んだ場合、自分はどうするのだろうか?と。 ブラッドに言われた時、答えに窮したのはあの光を見たせいだけではない。 純粋に、イスラはあの問いに対する答えを持ち合わせていなかったのだ。 その場合を考えるのを、脳が無意識に回避していたのだろうか。 アティもアズリアも、戦闘力やいざという時の行動力も目を見張るものがある。 だから、簡単には死なないと思う。 でも、死者は順調に増えている。 おそらく、あと少しで聞こえるオディオの死者の宣告時にも、また何人か死んでいるだろう。 そして、軍や暗殺者の部隊と懸命に渡り合っていた幼き少女でさえも、もう死んでいる。 あの島で死ななかったからといって、今回も死なない保証はどこの誰もしてくれやしない。 その上で、考える。 アティやアズリアが死んでいた場合、イスラ・レヴィノスはどうするのだろうか? オディオを倒して生還して、レヴィノスの家を継ぐ? そうだ、順当に考えれば、それが一番自然で妥当な考えだろう。 でも、理性とは違う別の何かはシックリこない、何かが違うといっている。 そうなった自分の姿を上手く想像できないのだ。 この島でさえ、誰とも友情を育むことなく一人で行動しようとしているイスラ・レヴィノスに、一体なにができるのだろうか? それが自分の望んでいたことなのだろうか? いや、違うと断言できる。 死にたいと思っていたイスラが生きて、生きたいと思っていたアズリアが死ぬなんて、絶対にあってはならない。 もう一度受けた生は、アズリアのために使うつもりだった。 イスラはここは自由だと、以前思った。 魔王に立ち向かうのも、その結果やられるのも自由。 自暴自棄になって首輪を外そうとして爆発しても自由。 逃げようとしても、何をしようとしてもここは自由なのだ。 でも、イスラはこの自由をアズリアのために使うと決めたのだ。 もしも、アズリアがこの先死ぬようなことがあれば―― もしも、もうアズリアが死んでいたのだとしたら―― 使い道のない自由なんて、あったって何になるんだろう? 【I-6 橋付近 一日目 昼】 【ヘクトル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】 [状態]:全身打撲(小程度)、疲労(小) [装備]:ゼブラアックス@アークザラッドⅡ [道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、ビー玉@サモンナイト3、 基本支給品一式×2(リーザ、ヘクトル) [思考] 基本:オディオをぶっ倒す。 1:東へ向かう。 2:仲間を集める。 3:フロリーナ達やブラッドの仲間、セッツァーの仲間を探す。つるっぱげも倒す 4:セッツァーをひとまず信用。 5:アナスタシアとちょこ(名前は知らない)、エドガー、シャドウを警戒。 [備考]: ※フロリーナとは恋仲です。 ※鋼の剣@ドラゴンクエストIV(刃折れ)はF-5の砂漠のリーザが埋葬された場所に墓標代わりに突き刺さっています。 ※セッツァーとイスラと情報交換をしました。一部嘘が混じっています。 ティナ、エドガー、シャドウを危険人物だと、マッシュ、ケフカを対主催側の人物だと思い込んでいます。 ※マッシュとセッツァーの情報の食い違いに気づいていません。 【ブラッド・エヴァンス@WILD ARMS 2nd IGNITION】 [状態]:全身に火傷(多少マシに)、疲労(小) [装備]:ドラゴンクロー@ファイナルファンタジーVI [道具]:不明支給品1~2個、基本支給品一式 [思考] 基本:オディオを倒すという目的のために人々がまとまるよう、『勇気』を引き出す為の導として戦い抜く。 1:東へ向かう。 2:仲間を集める。 3:自分の仲間とヘクトルの仲間を探す。 4:魔王を倒す。ちょこ(名前は知らない)は警戒。 5:アナスタシアを救う。 [備考] ※参戦時期はクリア後。 【イスラ・レヴィノス@サモンナイト3 】 [状態]:健康、疲労(小) [装備]:魔界の剣@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち [道具]:不明支給品0~1個(本人確認済み)、基本支給品一式(名簿確認済み) 、ドーリーショット@アークザラッドⅡ 鯛焼きセット(鯛焼き*2、ミサワ焼き*2、ど根性焼き*1)@LIVEALIVE、ビジュの首輪、 [思考] 基本:首輪解除と脱出を行い、魔王オディオを倒してアズリア達を解放した後安らかに死ぬ 1:東へ向かう。 2:途中危険分子(マーダー等)を見かけたら排除する。 3:エドガーとルッカには会った方がいいかな? 4:極力誰とも会わず(特にアズリア達)姿を見られないように襲われたり苦しんでいる人を助けたい。 5:今は姉さんには会えない………今は。 6:もしも姉さんが死んでいた場合は……? [備考]: ※高原、クロノ、マッシュ、ユーリル、ヘクトル、ブラッドの仲間と要注意人物を把握済み。 ※参戦時期は16話死亡直後。そのため、病魔の呪いから解かれています。 ※マッシュとセッツァーの情報の食い違いに気づいていません。 ※イスラたちが見たのはケフカによるアルテマの光です。 時系列順で読む BACK△085 ノーブルディザイアNext▼087 第二回定時放送 投下順で読む BACK△085 ノーブルディザイアNext▼087 第二回定時放送 068 ヘクトル、『空』を飛ぶ ヘクトル 096 僕は泣く ブラッド 076 “剣の聖女”と死にたがりの道化 イスラ ▲
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/20214.html
登録日:2011/01/31(月) 21 47 00 更新日:2023/12/28 Thu 20 57 37 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 RPGツクール RPGツクール2000 VIP エターなった ゲーム コンパク モナーRPG ラウンジ作品 傑作 古いファイル→何だっけコレ?(カチッ)→うわぁぁぁぁあ!!!(ゴロゴロゴロ) 名作 高橋邦子 黒歴史メーカー 『RPGツクール2000』とは、ゲーム制作キット「RPGツクール」シリーズの1作である。 2000年4月5日発売。 ●概要 Windows系では『RPGツクール95』に続く2作目の「RPGツクール」作品である(PC系ではPC98の作品を含め4作目)。 「変数」の導入を始めとして、多くの要素が前作からパワーアップしている。 歴代のあらゆる「RPGツクール」の中でも屈指の名作と誉れ高く、過不足なく充実したイベントコマンドと変数システムにより、シンプルながらも奥深いゲーム製作が可能。 その優秀さから広く長く普及し、使用者・作品数ともに極めて多い。 もちろん、パソコン用RPGツクールは以後も続々とリリースされたが、永らく驚異的な普及率と認知率を保ち続けた。 そのため、ネットで本作のための素材を配布しているサイト等も数多く存在し、選択肢は非常に豊富である。 ただし、版権素材を使うなら一般配布は止めよう。約束だ。 基本的なシステムは、見下ろし型のフィールド画面&正面視点でコマンドを選択するターン制の戦闘画面…というドラクエを踏襲したスタイル。最大パーティーメンバー数は4人。 デフォルトの戦闘画面はちょっと野暮ったいため、イベントコマンドを駆使して戦闘システムを自作するツクラーもいる。 ここまでの事を実現するには相応の技量を必要とするが、最盛期にはそんな作品がゴロゴロしており、デフォルトシステムだけで済ませている作品はそれだけで物足りなく見えるくらいだった。 それくらい、『2000』の懐は深かったのである。 しまいには格闘ゲームやアクションゲームまで作ってしまう猛者も数多く存在した。 一応、ツクールシリーズは格ゲーやアクションを作る物が当時からあったはすなのだが、それらがロクに普及しない一方で、本作を魔改造する者がどんどん増えるとは…。 使用するうえで想定されているPCスペックやネット環境など、さすがに今となっては時代を感じさせるような要素も少なくないが(*1)、当時としてはかなりツボを押さえた良システムであり、また、今後の環境の変化にも対応できるものであった。 インターネット、ひいてはパソコンの急速な普及に重なった本作のヒットは、ネット上におけるアマチュアゲーム文化隆盛の立役者となったことは間違いない。 00年代の爆発的なフリーゲームブームは本作なしではなし得なかっただろう。 当然だが、PCのツクールは家庭用ハードのツクールに比べて圧倒的に自由度が高い(これは『2000』に限らず、あらゆるツクールに言える)。 特に、製作者のイマジネーションを刺激し夢を形にする「ツクール」において、自由度というものは何にも勝る最重要要素である。 ●以下、家庭用シリーズより優れている箇所 戦闘アニメ(技のエフェクト)を自分で作成できる。 自分の描いたイラストをそのままゲーム内の顔グラフィックやモンスターグラフィックに使える。 素材を集めるor作るかすればフルボイスのゲームも作成できる。 グラフィック表示等を利用して自作戦闘やRPG以外のゲームを作れる。 ゲーム(ツクール)内のあらゆる項目の数の増減が可能。 あらゆる素材を自分の手で作ることができ、かつそれらを容量の許す限りゲーム内に取り込める。 作成中のデータは直接パソコンに保持できる(据え置き機版だと外部メモリを新規購入しておかないと保存できないケースが多い)。 配布もサイト等にアップするだけで良い、プレイする側もRTPをDLしておけばプレイ可能(据え置き機版だとソフトとメモリが無ければプレイ不可能)。 無論、家庭用ツクールもまたシリーズを盛り立ててきた存在であり、従来PC用ツクールと家庭機用ツクールは、手軽さと自由度において一長一短の関係にあった。 しかしPC用シリーズが本作で躍進を遂げた一方、家庭用シリーズは『ツクール3』を最後に凋落の一途を辿ることになる。 そのうちパソコンの普及でハードルの格差も無くなっていったため、このあたりからツクールシリーズは主戦場をPCに移すことになる。 後に『RPGツクール2000 VALUE!』、『RPGツクール2000 VALUE!+』と、二度にわたり廉価・アップデート版が販売されている(*2)。 最新OSへの対応、使用キーの増加、表示ピクチャ数の増加、MP3ファイルへの対応などが行われた。これを利用すれば「ラスボス戦にGONGを流す」なんて熱い表現をする事も…!! また、アスキーツクールの公式サイトにて体験版がダウンロード可能。 この体験版、無料なのにツクール2000のほぼ全ての機能を使用可能かつ作成データの保存も可能だった。 制限こそあるが、大作を作ろうとしなければあまり問題にならない。 (一応、音楽がピアノになるバグが存在する) 続編の体験版はプロジェクトデータが起動中しか保存されなかったり、他のゲームデータの読み込みができないと言った制約が大きい中で、 この作品の体験版は(自分で楽しむ範囲内ならば)無料でゲーム作りが出来る最高のソフトとも言えた。 …が現在は起動が30日制限が掛かっているVerに変わってしまった。 一応、2000と何故か2003のハンドブック付属のCD-ROMに素材データと一緒に搭載されているので、試して見たい人は購入を検討してもいいかも知れない。 今は製品版がネットで購入できるので、わざわざ有料体験版なんて必要ないと思われるが… ●RTP(ランタイムパッケージ) 本作から導入された要素。 ツクールに最初から入っている画像や音の素材、所謂デフォルト素材一式をまとめたものである。 ツクール2000は、これらのデフォルト素材をゲームプレイヤー側が予めインストールしておくシステムを採用している。 プレイヤーは公式サイトからRTPを予めダウンロード・インストールしておかないと、RPGツクール2000のゲームを遊ぶことはできない。 これによって、ゲーム制作者は作品を配布するとき、デフォルト素材をファイルに含める必要がなくなる。 当時はまだまだ回線やサーバーが未成熟で、数MBのダウンロードにも時間が掛かるユーザーも多かった。 そのため、ゲームの容量を最小限にするために考案されたシステムなのである。 追加した自作素材などについてはファイルに入れる必要があるが、全素材自作なんてケースは流石に少ないため、大抵はRTPによって軽量化の恩恵を受けられる。 デフォルト素材しか使っていない作品ならマップデータ以外はほぼ空っぽで配布することができたため、かなりの小容量で済んだ。 ネット環境が充実し、ADSL→光と高速回線が普及するにつれて必要性は薄れていったものの、『2003』『XP』『VX』と、作品を経てもRTP体制は続いた。 最終的に『RPGツクールMV』で廃止されるまで、このシステムは継承されていった。 また、「RTP」は単純にデフォルト素材を指す通称としても用いられる。 ツクール2000のRTP素材といえば、まあ安定した出来で汎用性は高いのだが……その分、何とも言えない地味さで、ハッキリ言ってかなりダサい。 そのため数々のゲームをプレイするうちにだんだんうんざりしてくる人もおり、時にはデフォルト素材を使っているというだけでマイナス点と見做されることもある。 しかし一方で、その独特の味に愛着を覚える層も現れ、デフォ素材のグラフィックに勝手に固有のキャラクターが付けられて、ユーザー間で共有されたりもしている。 ●サンプルゲーム ツクールにおいて忘れてはならない存在がサンプルゲームである。 長いツクラー道のほんの序章にして、ツクールの可能性を示す案内人たち。数日でエターナったツクラーにとってはこれが[[ゲーム]]本体になる。 『2000』には粒揃いの7本が収録されている。 またこれらの作品に使われているオリジナル素材は、一部を除いて制作素材として使うことが許可されている。 SAMPLE1 『花嫁の冠』 ある意味本作の目玉である作品。 なんとプロのクリエイターを起用し、豪華声優陣によるボイスまであるたぶん世界一豪華なサンプルゲーム。 キャラクターデザインは『俺の屍を越えてゆけ』の佐嶋真実、シナリオは後に『GJ部』などを手掛ける新木伸。 出演声優は鈴村健一、今井由香、田村ゆかり、冬馬由美、堀江由衣、うえだゆうじ、釘宮理恵、塩沢兼人などビッグネームが名を連ねる(*3)。 内容は主人公カインが「好きな相手とは結婚できない」という村の呪いを解くため、元凶である魔王を倒しに行くファンタジーRPG。 RPGであるとともにギャルゲーでもあり、村に住む6人の女の子をパートナーにしてダンジョン攻略に挑んでいく。そして村の呪いを解いた暁には……? 魔王退治と言っても終始牧歌的な雰囲気が漂う作品なので、人気声優演じる女の子とイチャイチャしながら冒険しよう。 RPGとしては村1つとダンジョン1つにいくつかの寄り道を加えたコンパクトなスケールで、ツクールの主要な機能をひととおり使っているのでサンプルとしては至って堅実な作品。 残念なことに本作の素材はほぼ全て使用が許可されていない。声優の音声素材とかがあるので仕方ないが、出来のいいドット絵やMIDI素材も巻き添えを食って使用不可になってしまっている。 ちなみに新木伸の作品『GEφグッドイーター』では「7人の嫁をゲットしたカインおじいちゃん」が同作の主人公カインの曽祖父とされており、他に本作のストーリーを基にした『薪割りスローライフ始めますか?』も執筆している。 SAMPLE2 『Abyss-Diver #0』 コンテストパーク受賞作家、重歳謙治による作品。 人口爆発による居住区不足に陥った未来世界のサイバーパンクRPG。 主人公は、過去に投棄された地下居住区を暴走した警備ロボットやモンスターから奪還する「アビスダイバー」を生業とし、稼業の傍ら、行方不明になった同業の友人を探すため地下に潜る。 緻密な世界観と、アイテム収集に独自の成長システムなどのオリジナリティが光る。サンプルにして既にツクールの奥深さをこれでもかと掘り下げ、ユーザーに示してくれる秀作。 また本作に使われているSF風オリジナル素材は、中世ヨーロッパ風に偏ったデフォ素材の補強という意味でも非常にありがたい存在。 続編にあたる『Abyss-Diver #1』が『ツクールVX』のサンプルゲームとして収録されている。 SAMPLE3 『クイーン・クー』 アーフィオ王国の女王でありながら、お転婆な14歳の少女であるサーリアは、クーハルサと名乗って街に下り、市井の世界と国の現状を学んでいく。 王女としてのスケジュールをこなしながら、ギルドの物資流通に関わったり、モンスターを使役してダンジョン探索したりするシミュレーションゲーム。 絵柄も女の子向けっぽいファンシーな感じで、『アトリエシリーズ』などを思い浮かべると近いかもしれない。 グラフィックはほぼ自作、さらには戦闘や探索、物資運送のシステムも全て自作で組まれている非常に気合の入った作品。 自作プログラムで最早RPGじゃない作品も数多く生み出したツクール2000だが、その萌芽はこの時点ですでに芽吹いていた。 SAMPLE4 『修道院』 探検家アーガルは行方不明の子供たちを探すため、魔物が蠢く修道院に挑むことになる。 『ゼルダの伝説』のようなフィールド上で戦闘を行うアクションRPG。 単純なコマンドを使った物のためアクション性は高いとは言えないが、これも独自システムに挑戦した意欲作と言えよう。 グラフィックも自作だがそのクオリティゆえに非常にシュールな感じになっており、それを自覚してかホラーっぽいわりにノリは軽い。 魔物や死体の傍らになぜか携帯ゲームが転がっており、4種のミニゲームがプレイできる。……が、このミニゲームの方が明らかに本編より作り込みが凄い。 SAMPLE5 『蠢く闇の砦』 財宝を求めて廃墟の砦を訪れた冒険者アーテルだったが、仲間が悪霊に憑依され、悪霊蠢く砦に一人閉じ込められることになる。 「荒れ果てた建物内で、彷徨うモンスターから逃げながら謎を解き、脱出を目指すホラーRPG」という、ご存じ後のツクールの歴史において一大ジャンルとなる系統である。 後になって振り返ると意外な価値が見出せる作品かもしれない。惜しむらくはRTP素材が致命的にホラーに向いていない。 SAMPLE6 『Ⅲ』 コンテストパークプラチナ賞受賞作『囚人へのペル・エム・フル』の作者である八百谷真が手掛けた作品。 思想犯として捕らえられた主人公カレス・アクセリーは、ある時自分の霊的分身を作り出す能力「ゴースト」に目覚める。 同じ能力を持つ3人の囚人による脱獄計画に巻き込まれるが、失敗した彼らとともに異空間に閉じ込められてしまう。 狭いフィールド内で使い捨て可能な分身「ゴースト」を駆使し、隠れたり敵の不意を打ったりする、互いが鬼のかくれんぼのような独自のゲームシステム。 美麗なグラフィックとテクニックが要求されるゲーム性、中二病魅力的なキャラクターから特に人気が高い作品。非常に短いのが玉に瑕。 SAMPLE7 『海賊』 16歳を迎えた少年クレスは、小さな島から大海原に漕ぎ出し、「海賊王」となることを目指す……という海洋冒険物語。 色々と個性派ぞろいのサンプルゲームの中で、デフォルト素材のみを使った西洋風冒険ファンタジーRPGというあんまりにもストレートな作品。 ボリュームだけは随一なのだが、そのボリュームはだだっ広すぎるフィールドとお粗末なゲームバランスに水増しされており、中身は非常に薄く、おおむねクソゲーと認識されている。 本編は全部デフォ素材のくせに唯一EDムービーがある。そんなところまでクソゲーっぽくしなくても… しかしそんなダメっぷりが逆に愛しかったのか、本作を弄るパロディ二次創作ゲームがツクられたりした。 ツクールの基本的な部分だけを使っているという点では、ある意味最も「サンプルゲーム」らしい作品と言える。……反面教師にしたほうがいい部分も多々あるが。 ●RPGツクール2000で作られた有名作 ※非常に数が多いので、有名所、もしくは項目が存在するものを優先します。 なお、二次創作系については記載しないでください。 タオルケットをもう一度 寄生ジョーカー Moonlight Labyrinth いちろ少年忌憚 Nepheshel Histoire 光と闇のセレナーデ 日記のネタが無いときの逃げ道 ミチル見参! シリーズ おばけ屋敷探検隊 ドロロンハイツの使用人 もしもシリーズ(VIPツクールスレより) 旋風仮面 ツクラーの野望 モナークエスト 夜明けの口笛吹き セラフィックブルー シルフェイド幻想譚 Ib Ruina〜廃都の物語〜 上記に述べたように、版権もの素材を利用して二次創作ゲームも作れるが、一般公開は控えよう。 それがもとで潰されたサイトは意外に多い。 さらに、どのゲームがとは言わないが、某動画サイトにて元ネタゲームプレイ動画にある二次創作ゲーム信者が荒らしを行った為、 取り込むべきファンを敵に回してしまい、以降、そのプレイツクールゲーのプレイ動画を投稿する事はタブーとなってしまっている。 そういった意味でも取り扱いは十分気をつけるべきである。 追記・修正はゲームを1作品でも完成させた人のみお願いします △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] セラフィックブルーの項目、以前はあったのか・・・ -- 名無しさん (2013-07-31 21 05 45) こういうの大好きだ。 -- 名無しさん (2013-07-31 21 23 36) 最近体験版で頑張っています -- 名無しさん (2013-07-31 22 05 27) 駄作名作含めて作品数多いのはぶっちゃけ割れるから -- 名無しさん (2013-07-31 23 05 34) 割らなくても十分安いのもある -- 名無しさん (2014-03-06 17 01 43) たしかIbも2000だったよね -- 名無しさん (2014-07-12 17 23 26) このツールで良作ゲームを作った一般人は中二病の極みwwwもちろん誉めてる意味でwww -- 名無しさん (2014-07-20 15 57 39) XPからは、システム周りいじれて、より自分の作りたいものを作りやすくなったからなぁ・・・ -- 名無しさん (2014-07-20 16 00 05) 高橋タグをつけた奴出て来いww -- 名無しさん (2015-02-02 23 00 18) ↑そうだ! 高橋さんは今はVXに移行したんだぞ!(ソウイウモンダイデハナイ -- 名無しさん (2015-02-06 18 35 23) 有名どこのフリーゲー多いのな。すげー。 -- 名無しさん (2015-02-06 20 38 15) 一部の奴等からは嫌われている、私は大好き -- 名無しさん (2015-12-13 09 10 52) ごめんなさい。自分は以前、「終始2000を貫くぞ!」と言ってましたが、数年前からXP→VXと鞍替えしてしまいました(土下座 -- 名無しさん (2017-08-14 18 36 57) ウォーターは俺の娘はめちゃめちゃ遊んだなぁ…知ってる人いる? -- 名無しさん (2018-08-16 07 08 55) このツクールでスマブラを完全再現した頭おかしい(誉め言葉)人がいると聞いて -- 名無しさん (2019-02-26 08 49 57) ↑うっそ!? すげええええええ!! -- 名無しさん (2019-02-26 15 24 33) ↑「もしもスマブラだったら」で参照。ありゃツクールシリーズの技術の極致だわ.... -- 名無しさん (2019-02-26 18 02 12) ↑のコメントを見て、さきほどスマブラ版を鑑賞しました....すげぇぇぇ!キャラチップで戦闘姿を作るの大変だけど...あれのスマブラ版って凄すぎる! -- 名無しさん (2020-05-06 22 58 41) そういえば、2000ではなくてMVの話になっちゃうけど、MVでブラウザゲーを作った場合、そのブラウザゲーのRPGはNew 3DSやSwitch(のブラウザ)でも遊べるのかな? もし遊べるなら、無理してMVTで作らなくても、MVでブラウザゲーを作って公開、という道が開ける、と思うんだが。 -- 名無しさん (2020-11-23 15 28 29) 自分はモングラだったら(ネットで配布されてたのを含めて)この世代のが好きだったな…ただ、2000を使ってるにも関わらず戦闘がサイドビューになってたりしたら凄い萎えてたな -- 名無しさん (2020-11-23 16 13 46) 名前 コメント